ヒーローズ・ジャーニーを使ったマンガや映画、小説は数多くあります。
今回の記事では、「ワンピース」にどのようにヒーローズ・ジャーニーが使われているのかを解説していきます。
ヒーローズ・ジャーニーのステージに何が当たるのか、登場人物がどのアーキタイプに当たるのか、については、様々な考え方がありますので、一意見として参考にしていただけたらと思います。
※作品のネタバレを含むため、ネタバレを見たくない場合は、読むのをお控えください。
ここから先は、私のメモなので、
いろんな好みや意見があるんだなぁとご理解いただける方のみ、どうぞ!
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ワンピースのヒーローズ・ジャーニー
ワンピースは、ルフィが海賊王を目指して冒険に出るストーリーです。まだ未完ですが、ルフィが海賊王になるまでのストーリーは「ヒーローズ・ジャーニー」に沿って今後も進んでいくと思われます。
大きなストーリーの流れが「ヒーローズ・ジャーニー」になっている一方、「〇〇編」の各ストーリーで、それぞれ「ヒーローズ・ジャーニー」が繰り広げられ、「ヒーローズ・ジャーニー」が二重になっているという特徴もあります。
まず、大きなストーリーの流れから、どのように「ヒーローズ・ジャーニー」になっているのか見ていきましょう。
大きな流れのヒーローズ・ジャーニー
1. 日常世界
フーシャ村での日常風景。幼いルフィは海賊に憧れ、シャンクスに船に乗せてほしいと頼むが断られ続けている(「冒険の拒否」の側面もある)。
2. 冒険への誘い
ある時、酒場に山賊がやってくる。山賊に酒をぶっかけられるも、やり返さずに笑うシャンクスとそれに怒るルフィ。
3. 冒険の拒否
再会した山賊に言い返したことで、ルフィは山賊に捕まってしまう。山賊相手に手も足も出ないルフィ。そして、海に投げ捨てられてしまう。
4. 師との出会い
シャンクスが身を挺して守ってくれたことでルフィは助かる。ルフィは海の過酷さと自分の弱さ、シャンクスの偉大さを知った。ルフィは海賊王になると宣言。シャンクスから大切な麦わら帽子を託される。
5. 最初の戸口の通過
10年間の修行の末、海へ出る。10年前に襲われた近海の主を倒し、冒険の旅が始まる。
6. 試練、仲間、敵
途中、様々な敵と戦いながら、ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジと仲間を増やしながら、旅を進めていく。
7. 最も危険な場所への接近
グランドラインを進むルフィ達は、折り返し地点となる「レッドライン(赤い土の大陸)」へ到着する。「新世界」へ行くにあたり、船に特殊なコーティングをするために立ち寄ったシャボンディ諸島で、ルフィたちは騒ぎを起こしてしまい、仲間は世界各地へと飛ばされ、バラバラになってしまう。
8. 最大の苦難
ルフィは、処刑が間近に迫った兄のエースを救うため、世界最大の大監獄、インペルダウンへ潜入し、マリンフォードでの頂上戦争へと参戦する。しかし、目の前でエースがやられてしまう。
9. 報酬
ルフィは、エースを救えなかったことへの後悔と自責の念で押しつぶされるが、ジンベエの言葉により、自分にはまだ大切な仲間が残っていることを思い出す。仲間を守り、海賊王になるために、2年間の修行期間を設ける決意をする。
10. 帰路
2年後、成長したルフィは、仲間達と再会し、新世界への入口となる魚人島へと進んでいく。そして、パンクハザード、ドレスローザ、ホールケーキアイランド、ワノ国など、様々な冒険をしていく。
原作は今この辺りです。
11. 復活
まだ原作で描かれていないステージ。
12. 宝を持っての帰還
まだ原作で描かれていないステージ。
各編のヒーローズ・ジャーニー
ワンピースは、「〇〇編」とわかりやすく分かれています。例えば、グランドラインに入るまでが、「東の海(イーストブルー)編」です。
ヒーローズ・ジャーニーの全てのステージの要素が毎回あるとは限りませんが、この「〇〇編」の中で、ヒーローズ・ジャーニーが回っているのです。
「回っている」という表現をするのは、ヒーローズ・ジャーニーがそもそも円のようなもので、ひと回りして元の位置に戻ってくるというイメージのものだからです。
この「小さな」ヒーローズ・ジャーニーがどう回っているか見てみましょう。
1. 日常世界
ルフィと仲間たちの、船の上での何気ないやり取りがワンピースでの日常風景です。
サンジがご飯を作ってくれたり、ゾロが昼寝をしていたりするのを見ると「平和だなぁ」と感じる人も多いのではないでしょうか。
2. 冒険への誘い
海賊王になるための航路を進んでいく中、アクシデントに遭遇したり、誰かに出会ったりして、冒険の旅が始まります。
例えば、 アラバスタ編は、ルフィたちが「グランドライン(偉大なる航路)」へ入った矢先、巨大クジラに船ごと丸呑みされてしまい、そのクジラ(ラブーン)の体内で出会った怪しい2人組(Mr.9&ミス・ウェンズデー、後に正体を隠したビビと判明)に、彼らの町まで送り届けてほしいと頼まれたことから始まります。
ここからは、アラバスタ編のヒーローズ・ジャーニーです。
あらすじはこちらのウェブサイトも参考にしています。
3. 冒険の拒否
Mr.9&ミス・ウェンズデーを送り届けた先で、ミス・ウェンズデー、そして同じくエージェントであるMr.8の正体が、アラバスタ王国の王女ビビと護衛隊長イガラムである事が判明。二人は祖国で起きた暴動の裏にバロックワークスの存在を嗅ぎつけ、正体を隠してその目的を潜入調査していた。そして社長で〝王下七武海〟の一人でもあるクロコダイルが、アラバスタ王国の乗っ取りを企んでいると突き止める。ルフィたちは、ビビを祖国へ送り届けるよう依頼される。ナミは嫌がったものの、クロコダイルが黒幕という秘密を知ってしまい、成り行き上、ビビを送り届けることになる。
4. 師との出会い
アラバスタ編では、「師」とまで言える人との出会いはありません。
ワンピースの特に最初の方では、師との出会いの代わりに、仲間との出会いが描かれます。
アラバスタ編では、チョッパーとニコ・ロビンに出会います。
5. 最初の戸口の通過
順番が3と逆になりますが、最初の戸口の通過は、ゾロが一人で100人を返り討ちにした「ウイスキーピークでの戦い」と言えそうです。
6. 試練、仲間、敵
途中、リトルガーデンでの戦いやナミの病気という試練、チョッパーを仲間に加えて、旅を進めていく。
7. 最も危険な場所への接近
首都アルバーナに向かうルフィたちの前に、クロコダイルが立ちふさがる。
8. 最大の苦難
ルフィは仲間達を先に行かせ、一人クロコダイルと対峙することに。だが、「スナスナの実」後からの前に敗北し、瀕死の重傷を負ってしまう。だが、ミス・オールサンデーことニコ・ロビンや護衛隊のペルにピンチを救われる。
9. 報酬
首都アルバーナへ到着したゾロ達は、ビビをコーザのもとへ送り届ける為、囮役を買って出る。狙いは当たり、バロックワークスのエージェント達を見事おびき出す事に成功する。
10. 帰路
クロコダイルから、国王軍と反乱軍が衝突している宮殿広場に強力な砲弾が撃ち込まれるということを聞き、砲撃を食い止めようと、必死に立ち向かうビビ。タイムリミットが迫る中、時計塔に潜んでいた砲撃手を倒す事に成功。砲弾には時限式の起爆装置も仕組まれていたが、ペルの活躍により大惨事は免れた。
11. 復活
度重なる敗北にも屈せず、果敢にクロコダイルに挑み、ついに渾身の〝ゴムゴムの暴風雨(ストーム)〟でクロコダイルを地上へと吹き飛ばす。そして広場に響き渡るビビの魂の叫びが、戦う人々の手を止めさせ、アラバスタの戦いは終結を迎えた。
12. 宝を持っての帰還
戦いから数日後、海軍の追跡が始まり、ルフィ達はアラバスタを離れる事を決める。王女として国に残るか、麦わらの一味と冒険に出るか迷うビビだったが、最後は王女として愛する国と共に生きていく道を選ぶ。再び会えたら、また仲間と呼んでほしい。そう涙ながらに問いかけるビビに、ルフィ達は左腕に記された仲間の印をかかげて応えるのだった。
ワンピースの登場人物のアーキタイプ
次に、多くの物語に共通してみられる8つの登場人物のタイプ(アーキタイプ)が、ワンピースでどのように出てきてるかをまとめてみます。
ヒーローズ・ジャーニーのアーキタイプについては、こちらの記事も参考にしてください。
1. 英雄
ワンピースでの「英雄」はルフィということを疑う人はいないでしょう。
ただし、他の仲間たちも「英雄」になり得ます。
ここでは、ルフィという前提で進めていきます。
2. 師
ルフィの最初の師(原作で出てくる順)はシャンクスです。
また、物語の中盤で出てくるレイリーも師ですね。
ワノ国編でも師と呼べそうな人に出会っています。
3. 戸口の番人
フーシャ村近くの近海の主が最初の「戸口の番人」です。
また、グランドラインに入る一歩前のローグタウンで足止めを食らったり、(2年後)シャボンディ諸島を出る時に足止めを食らったりしたのも、それぞれ新たな冒険に旅立つ際の「戸口の番人」に当たります。
4. 使者
「使者」としては、色々使われていますが、新聞、賞金額、ビブルカードも使者と言えそうです。
5. 変身する者
変身能力を持っているボン・クレー(Mr.2)は「変身する者」の典型例です。
ルフィもシャボンディ諸島(2年後)やドレスローザで変装していますね。
6. 影
各編でルフィが出会う強敵は皆、「影」であると言えるでしょう。
ワンピースでは、「影」としてルフィの敵だった人が「仲間」になることも珍しくありません。
7. 仲間
麦わらの一味を含め、旅を進めるにつれて、数えきれないくらい仲間が増えていっていますね。
8. トリックスター
ワンピースでは、様々なキャラがトリックスター的な役割を演じています。
例えば、
- ウソップ
- バギー
- ボン・クレー
などですが、他にもたくさん「笑い」を取り入れています。
ワンピースとヒーローズ・ジャーニーの関係性から学べること
ワンピースは、ヒーローズ・ジャーニーを生かした作品の典型例です。
ワンピースの上手な点をいくつか挙げてみます。
日常世界と冒険世界の区別がはっきりしている
特に長編の場合には、「今は日常世界」「ここは冒険の旅」と読み手・観客に伝える必要があります。そうでないと、メリハリがなくなってしまい、見ている方は疲れてきてしまいます。
ワンピースの場合には、メリー号&サニー号の船の上は「日常」、それ以外は「冒険」とはっきり分かれ、読者が理解しやすくなっています。
主人公たちが成長しているということが明らか
ヒーローズ・ジャーニーの重要な要素の一つが、登場人物、特に「英雄」である主人公の成長です。
これを分かりやすく読み手に伝えることが必要なのですが、その際、主人公を取り巻く人たちもそれを認識しているように見せる必要があります。
ワンピースの場合には、「賞金額」がどんどん上がっていくことで、ルフィも仲間たちも成長しているということが、客観的に明らかです。
強くもなっているし、世界的な注目度も上がっているということですね。
ここが中途半端になってしまうと、「本当に成長しているのかなぁ」と読み手に疑念が湧いてしまうことにもなりかねません。
ワンピースとヒーローズ・ジャーニーまとめ
ワンピースはストーリーもキャラクター設定も異次元の作品ですし、「ヒーローズ・ジャーニー」に限らず学べることはたくさんあります。
ぜひあなただけの「読み方」を見つけてみてください。