ここ最近、若い世代の間でも人気が高まりつつあると言われている「ハリー・ポッター」シリーズ。
今月には、としまえん跡地に、「世界最大の屋内型ハリー・ポッターのエンターテイメント施設」ができたことでも話題になっています。
「ハリー・ポッター」シリーズが、読む人を惹きつけて止まないのはなぜなのでしょうか?
それには多くの理由がありますが、その一つに、「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」という、人気のある映画や物語が必ずと言っていいほど活用している理論が、「ハリー・ポッター」にも使われている点が挙げられます。
そこで、今回は、「ハリー・ポッター」シリーズにどのように「ヒーローズ・ジャーニー」が使われているのか、具体的に解説していきます。
「ハリー・ポッターの人気の秘密が知りたい」「ハリー・ポッターのような物語を描きたい」という人は、ぜひ参考にしてみてください。
なお、ヒーローズ・ジャーニーのステージに何が当たるのか、登場人物がどのアーキタイプに当たるのか、については、様々な考え方がありますので、一意見として参考にしていただけたらと思います。
※作品のネタバレを含むため、ネタバレを見たくない場合は、読むのをお控えください。
ここから先は、私のメモなので、
いろんな好みや意見があるんだなぁとご理解いただける方のみ、どうぞ!
↓
↓
↓
「ヒーローズ・ジャーニー」とは?
ヒーローズ・ジャーニーというのは、簡単に言うと次のようなストーリーです。
ヒーローズ・ジャーニー(Hero’s journey)とは
主人公は何かのきっかけで、冒険の世界へと旅立ち、数々の困難を乗り越え、最大の試練をクリアし、宝を得て、日常世界へと帰ってくる。
これだけではよく分かりにくいかもしれませんが、「ある日、主人公が日常世界から旅立ち、冒険をしてまた日常世界に戻ってくる」というのが大筋です。
とは言え、ヒーローズ・ジャーニーはこれだけではありません。実は、必要なステージ(話の流れ)の大枠が次のように決まっているのです。
幕 | ステージ |
---|---|
①出発 | 1. 日常世界 2. 冒険への誘い 3. 冒険の拒否 4. 師との出会い 5. 最初の戸口の通過 |
②イニシエーション(試練の旅) | 6. 試練、仲間、敵 7. 最も危険な場所への接近 8. 最大の苦難 9. 報酬 |
③帰還 | 10. 帰路 11. 死と復活 12. 宝を持っての帰還 |
「タイタニック」や「スターウォーズ」なども、このヒーローズ・ジャーニーの流れをうまく活用して、大人気作となった例です。
そして、「ハリー・ポッター」シリーズも同様です。具体的に「ハリー・ポッター」シリーズがどうヒーローズ・ジャーニーと合っているのか、見ていきましょう。
ハリー・ポッター第1巻とヒーローズ・ジャーニー
「ハリー・ポッター」は一巻ごとに「ヒーローズ・ジャーニー」がうまくまとめられています。
ここでは例として、第1巻の「ハリー・ポッターと賢者の石」のヒーローズ・ジャーニーを紹介します。
1. 日常世界
ハリー・ポッターは、赤ん坊のとき両親を交通事故で亡くし、ロンドン郊外に住んでいる叔母一家のダーズリー家に預けられていた。ケチで見栄っ張りな叔母夫婦には疎まれ、いとこのダドリーにいじめられる日々。
2. 冒険への誘い
11歳の誕生日を迎えるころ、ハリー宛てに手紙が届く。それは、ホグワーツ魔法魔術学校からの入学許可証だった。
3. 冒険の拒否
「まともであること」が大事で、魔法など認めないダーズリー夫妻は、ホグワーツからの手紙をハリーに見せまいと、あの手この手で妨害するが、手紙は毎日届く。ダーズリーは、ハリーをホグワーツに入学させまいと、家を離れ、手紙の届かなそうな場所へと一家で出かける。
4. 師との出会い
ハリーに手紙が届かないことに業を煮やし、ホグワーツの森の番人、ハグリットがハリーに手紙を届けにくる。そこで、ハグリットからダーズリー夫妻が隠していた真実を知った。両親が魔法使いで、亡くなった要因は交通事故ではなく、闇の魔法使い、ヴォルデモートに殺されたこと、赤ん坊であったハリーは、稲妻型の傷とともに、奇跡的に生き延びたこと。
ハリーはホグワーツへの入学を決心する。
※この時はハグリッドが「師」となるが、1巻を通しての師はダンブルドア。
5. 最初の戸口の通過
ホグワーツに行くには、キングズ・クロス駅の「9と3/4番線」から出発する汽車に乗らなくてはいけない。けれども、それがどこにあるのかハリーには検討もつかない。ハリーは、「ホグワーツ」という単語を口にしていた人に声をかけ、「9と3/4番線」への行き方を教えてもらう。そして、無事、汽車に乗り込み、ハリーは冒険の旅へと出発した。
6. 試練、仲間、敵
仲間:ロン、クィディッチのチームメンバーなど(ハーマイオニーは途中から)
敵、ライバル:マルフォイ
試練:スネイプによるハリーへの嫌がらせなど
7. 最も危険な場所への接近
夜に部屋を抜け出したハリー、ロン、ハーマイオニーは、誤って立ち入り禁止になっている部屋に入ってしまう。そこで目にしたのは、3つの頭を持つ凶暴な三頭犬だった。ハリーたちは一目散にその場から逃げた。
8. 最大の苦難
ホグワーツに入ってきたトロールに、逃げ遅れたハーマイオニーが襲われそうになる。ハリーはロンとハーマイオニーと力を合わせてトロールをやっつけることに成功した。
9. 報酬
ハーマイオニーがハリーとロンの仲良しの友達になった。
10. 帰路
そんな中、ハグリッドが見知らぬ人からドラゴンの卵をもらい、ドラゴンを孵化させたことを知ったハリーたち。飼育が違法となっているドラゴンの殺処分を避けるべく、ハリーたちはなんとかドラゴンをロンの兄に託すことに成功する。しかし、門限を破って夜に外に出ていたことがばれ、罰として大きな減点を受ける。ハリーは人気者から一変して、一番の嫌われ者になってしまう。
11. 復活
ハリーたちは、ハグリッドがドラゴンの卵をもらう代わりに、立ち入り禁止の部屋で「賢者の石」を守っている、3つの頭を持つ凶暴な三頭犬のなだめ方を教えてしまったことを知る。ダンブルドアが不在ということを知ったハリーたちは、「賢者の石」を守るべく、数々の仕掛けや難関を力を合わせてクリアしていく。最後にハリーがたどり着いた場所で、ハリーを待ち構えていたのは、クィレル教授。ヴォルデモートはクィレルに取り憑き「賢者の石」を奪おうとしたが、クィレルはなぜかハリーに触れることができず、ハリーは最後まで「賢者の石」を守り抜いた。
12. 宝を持っての帰還
ハリーはダンブルドアから多くの真実を知った。そして、「賢者の石」を巡る活躍のおかげで、ハリーたちのグリフィンドールが寮対抗杯を得ることができた。
ハリーたちは夏休みのため、ホグワーツを後にする。そして、ハリーは、相変わらずの様子のウィーズリー家に戻っていく。
ハリーポッターの登場人物の秘密
このように、「ハリー・ポッター」では、ストーリーの中にうまく「ヒーローズ・ジャーニー」が組み込まれています。
ただし、ハリー・ポッターの魅力は、ストーリーだけではありません。様々な登場人物が話を盛り上げてくれます。
そこで、多くの物語に共通してみられる8つの登場人物のタイプ(アーキタイプ)が、ハリー・ポッター第1巻でどのように出てきてるかを解説します。
ヒーローズ・ジャーニーのアーキタイプについては、こちらの記事も参考にしてください。
1. 英雄
「ハリー・ポッター」シリーズの「英雄」がハリーということを疑う人はいないでしょう。
2. 師
上の「ヒーローズ・ジャーニー」で見たように、「師との出会い」でハリーが出会うのはハグリッドです。
ハリーがホグワーツに出発するまで、ハグリッドは「師」のような役割を担いますが、ダンブルドアの使いとしての意味合いが強いと言えます。
第1巻「ハリー・ポッターと賢者の石」から最終巻まで、様々な「師」が登場しますが、シリーズを通しての一番の「師」はやはりダンブルドアでしょう。
3. 戸口の番人
「戸口の番人」とは、「英雄」が冒険の途中で出会う障害のことです。
ハリーが出会う最初の「戸口の番人」は、キングズ・クロス駅の「9と3/4番線」にたどり着くことです。ハリーはこの試練を、「知っていそうな人に聞く」ことでクリアします。
4. 使者
「使者」は「英雄」に対して変化の必要性や冒険の訪れを知らせる人物やモノなどです。
ハリーが出会う最初の「使者」はハグリッドです。
5. 変身する者
「変身する者」は、言葉のとおり、見た目や気分が変化するなどして、本性が見抜きづらい登場人物のことです。このような人物は、物語に疑いやサスペンスをもたらします。
例えば、「この人は味方なんだろうか、敵なんだろうか?」という動きをする人がそれに当たります。
ハリー・ポッター第1巻では、スネイプ、クィレルが「変身する者」です。
6. 影
「ハリー・ポッター」シリーズの「影」は当然、ヴォルデモートとその手下たちです。
ちなみに、マルフォイは「影」ではなく「戸口の番人」(小さめの障害)と言えるでしょう。
7. 仲間
ハリーの一番の「仲間」はロンとハーマイオニーです。
8. トリックスター
「トリックスター」とは茶目っ気やコミカルさを表す登場人物のことです。
深刻になりすぎている時に笑いを提供したりします。
第1巻でのトリックスターは、ハグリッドと言えます。
ハグリッドは、「師」「使者」「仲間」と様々な側面を持っていることが見て取れます。
おまけ:ハリー・ポッターをお得に読む手段は?
「久々にハリー・ポッターを見たり読んだりしたい!」
そう思う方のために、「ハリー・ポッター」シリーズをお得に楽しむ方法について紹介します。
映画
2001年11月に劇場版1作目が公開された映画「ハリー・ポッター」シリーズ。
現在、映画「ハリー・ポッター」シリーズを見放題視聴できるサブスク配信サービスは「Netflix」だけです。
その他、「U-NEXT」は、1作品あたり199円で、無料登録時に600ポイントがもらえるため、3作品は無料で見ることができます。「U-NEXT」の利用が初めてで、「ハリー・ポッター」シリーズだけを見るのであれば、「U-NEXT」もお得です。
映画「ハリー・ポッター」順番
- ハリーポッターと賢者の石(2001年)
- ハリー・ポッターと秘密の部屋(2002年)
- ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(2004年)
- ハリー・ポッターと炎のゴブレット(2005年)
- ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(2007年)
- ハリー・ポッターと謎のプリンス(2009年)
- ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1(2010年)
- ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2(2011年)
小説
小説は、日本語版も英語版も、「Kindle Unlimited」の読み放題対象となっています。
「電子版でいいから読みたい」という人は、Kindle Unlimitedの利用がお得です。
「ハリー・ポッター」シリーズ 小説版の順番
- ハリー・ポッターと賢者の石
- ハリー・ポッターと秘密の部屋
- ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
- ハリー・ポッターと炎のゴブレット(上下巻)
- ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(上下巻)
- ハリー・ポッターと謎のプリンス(上下巻)
- ハリー・ポッターと死の秘宝(上下巻)
オーディオブック
「小説を目で読むのはちょっと億劫…」という人におすすめなのが、「聴く読書」オーディオブックです。
ハリー・ポッターシリーズ(日本語版)は、Audibleの聴き放題対象になっています。
ハリー・ポッターを活用してヒーローズ・ジャーニーを体感しよう
「ハリー・ポッター」シリーズは、大人も子供も楽しめる作品ですが、「ヒーローズ・ジャーニー」を学べるという点でも、非常に役立ちます。
興味がある方は、第2巻以降も「ヒーローズ・ジャーニー」の観点から、分析してみてはいかがでしょうか。